製作者ブログ
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
かまくら様Planet Nineはわたし一人で作っていたわけではないものです。
大変おまたせいたしました。
「Planet nine」楽しくプレイ、読了致しました。
まずは本作品の佳作受賞、おめでとうございます!
サウンドノベルという形式は楽しんでプレイする側なのですが
一見簡単そうにみえて、実は演出にとても時間がかかるものと知っておりますので
このような形でまたお会い出来て嬉しく思えます。
実は、前回の「The moon lit up the way」が
剣と魔法の幻想系ファンタジーという世界観でしたので
今回の舞台が現代であるという点にとても良い意味で驚かされました。
作品の幅といいますか、対極的な世界観なので
一体どの様に描かれているのだろうとワクワクしたと申し上げますか……。
しかしながら、作家性と申し上げたらいいのでしょうか
読み進めるうちに、いえ、もう出だしから「かまくら様の作品だ!」と
確信が持てるほどの文章表現にあふれていて、
今回iOS端末から拝見したのですが、タップを繰り返して出てくる世界には、
前作を拝見したのは二ヶ月ほど前ですのに「懐かしい」という、
少しノスタルジックな気持ちに包まれました。
かまくら様の文体だ、と確信が持てるほど魅力的な部分は
いたる所にありましたが
「星」に対してのあらゆる表現と、
「夢」と「現実」という二極化された部分においての差別化
という二点がより大きなものでした。
まず、かまくら様は改めて「天体」をすごく大切に、
繊細に描かれる方だと感じることができました。
星一つ一つを丁寧に磨き上げるような言葉選びですとか
少し詰めて細かく咀嚼された用語ですとか
(キーワードの一つだからでもありますが
明星についてここまで知り関心できたのは初めてです、勉強になりました)
星や天体、宇宙は神秘的なものだけれども、身近にある存在なのだと教えてくれるような
そんな魅力がぎゅっと詰め込まれておりました。
また「夢」の詩的で曖昧で、繊細な幻想世界からはじまり
「現実」で親近感が持てて論理的、ミステリーテイストな文体に変わっていく
という「ふたつのテイストの共存」にも深い魅力を感じます。
個人的な言葉で申し上げますと「物質との距離感」でしょうか。
同じ「星空」に対する描写でも、
「夢」だと宇宙の浮遊感。非現実的で、キラキラとしていて、でも遠い感覚
「現実」だとプラネタリウムといった身近で、地に足をつけながらぼーっと見上げる、
解説や言葉があるからこそ、なんだか届きそうな近い感覚。
それらを小物だけではなく、文体を吟味して選ばれている印象を感じたのです。
サウンドノベルというジャンルですので
ビジュアル面、グラフィックやサウンドの力も大きいのかもしれませんが
言葉の詰め方、行間、テンポを、
「速さ」ではなく「奥行き」表現として選ばれているなと。
なにより雰囲気と真相を突き止めることを楽しむ作品ですから、
私としては心地よいテンポで、かつ立体的に楽しむことができとても良かったです。
また「SNS」をつかう、「チャットでやりとり」、「カフェで話をする」という
極めて現代的で、どこにでもありそうな、追体験や共感できる身近な存在と
「非公開なのに第三者が入退室する」「突然はじまる夢」という非日常な存在
その対比は面白く、特にチャットシーンで
【Nineが入室しました】と出た時のゾクリとした感覚は恐ろしいものでした。
次にキャラクターのバランスが素晴らしいなと感じました。
一章ごとにキャラクターの視点が変わり、
それぞれの価値観、生活、異変を知ることになるわけですが、
学生、営業マン、大人の女性、そして今作の要となる「操る」少年
年齢も性別も環境も異なる四人が中心となって、謎に少しずつ迫り
最終的に一堂に会するというもの……
アンケートやインタビュー、意見交換会では異なる属性の存在から情報を得たほうが
より結果に対して深みを増すと言われますが、「Planet nine」を拝見して
その意味が改めて解った気がします。
経験、感性が違うからこその発展性……特にミステリーめいた要素が強いお話ですから
天音さん、青葉さん、千鳥さんといういわゆる巻き込まれた
それぞれの三者三様な視点を楽しめたり、意見を交換したり
なによりそもそもの属性が違うことからキャラクター像としても覚えやすく特性もあり
そういった違いの丁寧な表し方も魅力的でした。
読後感に拘られたとのことですが、その点も非常に共感できました。
夏から始まり、秋、冬と時間が進み
最後に春に四人が笑って集合するシーンを見て、そして悠君の笑顔を見て
ああ本当に解決したんだ、良かったなと思ったのです。
実は悠君、初めて三人と対面した時、非常に怖かったんです。
何を言っても否定しそうな部分と、世界をまるごと恨んでいそうな部分。
それを招いた三人に伝えて、けれど排他的で感情もすり減って諦めているような……
一方で本当は、助けてほしいと手を伸ばして
来てほしいと必死に何年も訴えかけて、それでいて拒否されるのが怖くて――と
台詞に現れる訴えと、補完されてくる胸が締め付ける感覚が畳み掛けたところで
そこでようやく、主に天音さんの言葉を引き金に「受け入れられる」
これまで拒絶して閉じこもって、別の次元からあらゆる干渉をしてきた少年が
エンディングで笑って、「来れてよかった」と笑う。
私にとって非常に感極まり、泣いてしまったシーンでもありました。
三万文字以内とありましたが、それ以上の密度を感じてしまったのは
そういった「変化」が至る所にあったからだとも思います。
丁寧で、奥行きもあり、それぞれの特性を活かして真実を突き止め解決する
読後感に余韻があったのはやはりそういう「響く」部分の多さだと
私は思っております。
最後に、偶然ではあるのですが、最近宇宙の法則に関心を持っておりまして
スピリチュアル的なお話となるのですが(苦手でしたら申し訳ありません)
「生命持つものはみな宇宙次元ではつながっている
宇宙次元を信じた物は現実化を進めることができる」
という説がございます。
悠君の過去、考え方を見た時に、つい最近本で読んだばかりのフレーズと
似たような言葉が並んでいて非常に驚いてしまいました。
「怖いな」と感じたのは彼のキャラクター性だけではなく
共時性を感じてしまったという点が大きいのかも知れません。
ですからもしかすると、そういった宇宙世界の事に興味を持ち始めた私が
再びかまくら様の、天体や星、夜といった神秘的なお話に巡り会えたことは
必然なのかも知れません。
ついここまで、夢中になって筆を運んでしまいました。
それほど、あらゆる意味で引きつけられたお話で大変面白かったです。
手法、世界観問わずあらゆる引き出しを持つかまくら様が
これからも素敵な作品を手がけられる事を楽しみにしております。
おしそ